「ごった煮の街、大須へ」

5月に入りヒノキ花粉も段々と少なくなり、ポカポカ陽気で過ごしやすい時期になりましたね。
夜は何処からともなくラッパの練習が聴こえ、法被姿の人がちらほら、いよいよ浜松祭りという感じがします。
どうも健輔です。

先日、ふらっと1人で名古屋の大須へ行ってきました。今回はその日の事を大須道中記と称して紀行文風に書いてみようと思います。


《大須道中記》

4月7日、天気も良く暖かくお出かけ日和。
朝7時30分に妻に浜松駅まで送ってもらい、大須目指して出発。
お目当ては大須演芸場という寄席に出演する漫談家のユリオカ超特Qさんの漫談を聞く事だ。
とはいえ、出演者の大半が落語家や講談師なのでちょっと敷居が高いというか、興味はあるけど素直に楽しめるか少し不安だ。
まぁでもユリオカ超特Qさんの漫談を生で聞けるだけでも良しとしよう、なんて事を考えながらイヤホンからながれるユリオカ超特Qさんの漫談に耳を傾け電車に揺られた。

名古屋に到着。
到着するや否や、駅のホームにある住よしに入店。
朝ご飯はここでと決めていた。
うん、きしめんをすすると名古屋に来たなって感じがする。
 

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改札を抜けGoogle先生のナビの言う通りにバスに乗車。久しぶりのバスだ。
昔、降車ボタンを押したら小さな子に「押したかったー!」と泣かれてしまった事があるので、それからは直ぐには押さず様子をみて押す様にしている。
 

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10分ほど揺られ大須に到着。
浜松から1時間30分程、早いものだ。
開演まで時間があったため、一度大須演芸場の場所を確認した後、「ごった煮の街」大須商店街を散策する事にした。
電気機器販売店をはじめトレンドファッションの店、国際色豊かな飲食店、サブカルチャーの店、昔ながらの老舗店、さらには由緒ある神社仏閣や歴史的建造物がごちゃごちゃと建ち並んでいる事から「ごった煮の街」と言われているそうだ。

そんなごった煮の街をナビに従い歩いていると昔ながらの玩具屋だろう、到底著作権など気にしていないであろう看板が良い味を出していた。
ゴジラでもゴモラでもなくバラゴンが描かれている点にクスッとさせられた。
 

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商店街から抜け、しばらく歩くと風になびくのぼりが見えてきた。
大須演芸場だ。
 

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写真を撮っていると着物を着た受付の人が出てきた。
「お客さん? 1番乗り!」
と1番と書かれた入場整理券を手渡された。
寄席に来る事が初めてと伝えると色々と教えてくれて安心した。
話がひと段落したところで散策へ。

少し歩くと何処からか御線香の良い香りと浪曲が聴こえてきた。
鼻と耳を頼りに向かってみるとそこは大須観音。
 

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仁王門横で睨みをきかせている仁王像にお辞儀をし入ってみると、少し登ったところに本堂、そして手入れされた広い境内に満開とは言えないが綺麗な桜が。

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折角なので本堂へ行き御賽銭を。
「面白い漫談が聞けますように」
本堂から境内に戻ってくると、地元の人達なのかテントを設営し始めていた。
どう見ても人手が足りなそうだったので、お節介かなと思いながらも手伝う事に。
4つテントを建て終え、何かあるのか尋ねてみると、大須商店街で今日「無茶売り祭」なるものが開催されるそうで、このテントが運営本部になる様だ。
人も多く賑わう一日になるみたいだ。
「今日僕ら運営はお酒飲み放題だから、これ手伝ってくれたお礼」
と缶ビールと饅頭を頂いた。
ビールと饅頭、あまり見ない組み合わせに首を傾げながらも、饅頭をかじりビールを流し込んだ。
うん、やはりあわない。
しかし出先で人情の機微に触れる事は気持ちが良いものだ。

予想だにしないテント設営、予想だにしないビールと饅頭という組み合わせ、いかにも名古屋の人が好きそうな「無茶売り祭」の日に居合わせた、そんな今日は間違いなく面白い日になると確信した。

そうこうしてる間に開演時間5分前、ビールと饅頭というイカれた飲んだくれスタイルで大須演芸場へ向かうと、整理券番号順に待機列が出来ていた。

私の整理番号は1番だ。
待機列を見ると、常連であろう老夫婦の団体、着物を着ている落語家を目指しているっぽい人達、ペンとメモ帳を抱えた推測するに落語研究サークルの人達、推しの落語家なのか写真がプリントされたロンTを着てる落語家オタク女子達。
そんな、いわばホームな人達の先頭にアウェイの私が並んで良いのだろうかと戸惑った。
しかも手にはビールと饅頭だ。
けどこの中でユリオカ超特Qさんの漫談を一番聞いているのはきっと自分だ。そんなどうでもいい葛藤を経て、自称ユリオカ超特Qさんのファン代表として先頭に立った。

程なくして、
「開場で〜す!」
と号令がとぶと一番太鼓がドン!ドン!とごった煮の街に響き渡った。
チケットを見せ少し狭い通路を通り木戸口(入場口)をくぐり劇場内に入る。
少し冷んやりとしている。提灯がぐるっと掲げられノスタルジックな気色も相まって空気が澄んでいる印象を受けた。
 

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席は全て自由席、流石に前列は気が引けたので前から3列目の通路側に座った。
手渡されたパンフレットを読んでいると出囃子が流れ幕が開いた。
開口一番(前座)の落語家が登場。
ガヤガヤしていた会場がシーンと静まり、挨拶に加え本日の予定や注意事項を喋った後スムーズに落語に入っていく。
開口一番が終わり話の面白味を理解出来たこともあり、肩の力が抜けている事に気づいた。
1人15分の持ち時間で次々と演者が変わる。
4人目、遂にユリオカ超特Qさんの登場。
いつもは耳で聞いているユリオカ超特Qさんが
今、目の前で高座に立っている。
生で聞く漫談はそれはそれは面白く、笑い屋じゃないかと思うぐらい終始笑った。
話の構成、切り口、言い回し、くすぐりまで私好みで流石の漫談だった。

楽しい時間は直ぐに過ぎてしまうもので、午前の部は終わりお昼休憩に。
外へ出ると大須商店街は無茶売り祭で大賑わいだ。
シャッター街と化した商店街が多い中、こんなに賑わっている商店街初めて目にした。
商店街を練り歩くチンドン行列に気を取られながらも、ナビに従い裏路地に入る。
昼食を決めるのにあまり時間をかけたく無かったので、良さそうなお店は事前にチェックしておいた。
大須演芸場から近く、商店街から外れた、いかにも地元の人達が集まりそうなこじんまりとしたお店を選んだ。
情報によると8席のカウンターだけのお店だ。
 

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入口を開けると柔道の山下泰裕似の店主に
「1番奥の席空いてるよぅ!弁当?ビール?」と通された。
なんとなく「当たりだな」と思った。
大皿に並べられたおばんざいから、串カツと土手煮、あと鯖の塩焼きを頼んだ。
隣の70歳ぐらいの気さくなおじさんと「大須演芸場に漫談を聞きに」なんて話をしていると、反対側の奥の席の人から声をかけられた。
「あれ?テント手伝ってくれた兄ちゃんだよな?」
なんと大須観音でビールと饅頭をくれたおじさんだ。
そんな具合で盛り上がり瓶ビール1本頂いた。気前の良いおじさんだ。
今回大須に来た事をブログに書こうと思っていると伝えると、「なら写真載せてよ」との事で記念撮影までした。
この店に入って「当たり」どころじゃない、「大当たり」だった。
 

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14時、演芸場に戻り午後の部が始まった。
午後は折角なので2階席から観る事にした。
2階席はかなり空いていて、椅子ではなく畳に座布団が敷かれている事もあり、ゴロンと横になりどら焼きをつまみながら聞いてる人もいた。
2階席から見下ろす高座も良いもので、閉幕までリラックスして楽しめる事ができた。

ユリオカ超特Qさんの漫談を聞きに初めて寄席といわれる場所に足を運んだ今日。
生で観る芸はとても新鮮で、それでいて三味線や太鼓の音、畳に敷かれた座布団、寄席で使われる用語の数々にどこか懐かしさも感じた。
落語、講談、色ものといった昔からの文化を何年もの間、代々継承してきた日本の寄席文化に無知ながらも感銘を受けた。

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そんな私の大須1人旅は、ユリオカ超特Qさんの漫談を生で聞けた満足感と、落語、講談という新しく好きな文化に出会った多幸感、そして地元の人達とグラスを交わせる事が出来た充実感をもって帰路についた。
イヤホンで古典落語「まんじゅう怖い」を聞きながら。

大須道中記 -完-


という事で、道中記っぽく書いてみましたが少し長くなってしまいました。
それだけ充実した1日だったって事ですね。
また機会があれば大須演芸場や他の寄席にも行ってみたいと思っています。
長文駄文失礼しました。
それでは。